No,101 平成16年8月20日(金)

 前号で予告しましたように、去る6月30日夜9時頃から小浜市四分一の法雲寺で行なわれた法話の会(翌日が若狭地方では有名な“擂り鉢やいと”の行事)での院長の講演の要旨を掲載します。100人余りの善男善女が院長の話に熱心に聞き入り、さかんに頷いておられました。

■特集■ 「ボケと老化を防ぐには」  院長 中山 茂樹

 人には五感と言われる視覚、聴覚、嗅覚(きゅうかく)、味覚、触覚があります。この存在を常に意識することが大事です。この五感は脳に直結しているものですから、これらを働かそうと意識することは脳に常に刺激を与えることになります。

 まず最初の視覚−何でも良く見ること。テレビは感心しません。文字、文章そして自然。

 聴覚−聞くことは音楽や人の話などですが、ねえ、ねえ、あの人はね、とかの噂話や悪口のたぐいは感心しません。

 嗅覚−良い匂いを精々嗅いで下さい。臭いものには蓋(ふた)をするように、現代は何でも匂いを消そうとする方向に行っていますが、自然の匂いはいいですよ。自然の匂いを大切にしましょう。

 味覚−年齢と共に味覚が衰え、ついつい味付けが濃くなってしまいます。食材の自然の味を消そうとしています。こういう時こそ薄味で魚、肉、野菜など、自然の味を思い出せるようにしましょう。この間、トマトの昔の味に出会いました。

 最後に触覚−これが最も大切です。触るという指の行為は脳に直結しているのです。手先や指先で絵を描く、編み物をする、土をこねて陶芸をするなど、常に脳に刺激を与えます。

 これら五感を幾つになっても毎日磨いてい下さい。

 それに加えて、喜怒哀楽を大切に、とつけ加えたいと思います。テレビのドラマで泣いているだけではまだまだです。喜怒哀楽を人に向かって表に出す、自分の身の回りに起こることに素直に感情を出して行くということです。脳を刺激して、ボケておれなくなります。ただ、喧嘩はしないで下さい。

 さて、次には老化を防ぐ方法ですが、まずは老化とはどういうことなのか。

 成熟した人間が歳とともに身体的精神的な機能の低下、減衰を言います。老化の特徴は・・・
1)その過程は個人差があり、遺伝的要因で決められています。
2)老眼、皮膚のしわ、骨の脆弱化などの現象は非可逆的つまり昔に戻れないことなのです。
3)よって、早い、遅いの差はあっても進行性なのです。
4)女性の老化はエストロゲン分泌の停止に密接に関係しています。
5)個体の維持にとって常にマイナスに働きます。即ち、
6)抵抗力が劣り、予防力は衰え、ひとたび疾病に罹患すると復元が困難。ということになります。

 ですから誰しも歳には勝てません。そこで、1)最近どうも積極性がなくなってきた、と思われたら嫌でも色んな行事にどんどん参加して下さい。2)生きていることに喜びや、幸せを感じていないな、と思われたら、何か、ささやかなことにでも生きていて良かったと思うことを捜して下さい。3)昔のことばかり思っているな、と感じたら、未来指向性の欠如です。旅行や趣味での達成感を味わうように仲間を誘って下さい。最後に、4)人生に関して、分からないことについてくよくよ考えないこと、人のこと、世間のこと、放っときましょう。

 終わりに、ちょっと付け加えておきます。

 この会場には善男の方は少ないようですが、善女が沢山いらっしゃいます。女性は幾つになってもお化粧をなさることです。ちょっと出かける時でも口紅をちょっとさす、とよろしいと思います。かすかないい匂いは自分だけでなく、相手の嗅覚にも刺激を与え、脳を活発化して、ボケを防ぎ、老化を遅めます。


あとがき
1) 当院ミニ・ギャラリーでは北島忠喜さんの油絵の遺作展に続き、8月からは吉田正喜さん(小浜市山手)の能画と油絵と色紙展を展示中。
2) 今月は108年ぶりのギリシャでのオリンピックの夏。皆さん睡眠不足にご用心。
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