「読んだら知らないことがあった」と言われるようなことを書いてみます。今回は「図説−魚の目きき 味きき事典」(西ノ宮信一氏ら 3人著 [講談社+α文庫 全490ページ])より貝に関する部分を拾って要点だけ移します。魚については以下一例。
私の好物のグジ(=甘鯛)などは今頃になると小浜漁港で買っては自分でさばいて食べますが、刺身にしたことはなく、ひと塩か、味噌漬け、または粕漬けにして焼いて食べるのがほとんど、ただ、ひと塩の場合は時にお吸い物にするくらいです。ところがこの事典によりますと、京都では若狭のひと塩のグジを三枚におろして肉だけ皮からそぎ取って生でわさび醤油で食べるとあり、すっかり嬉しくなり、さっそく実行。舌つづみを打ちます。
それでは貝のうち春もののアサリから。沿岸にいるのがアサリ、外海ものはヒメアサリ。外観では見分けがつかない。水管の先についているヒゲの多いのがアサリ、ヒゲで水をろ過するので汚い沿岸、内湾に生息するとヒゲが多くなる。(人間の場合は汚いところに住んでいるからヒゲが多くなるわけではない=編者)。どちらも冬期は身がやせておいしくない。春先が美味。海水と同じ濃度の3%食塩水で1〜2時間砂をはかせるとよい。水道水は天日にさらし塩素を抜いてから。(当紙28号−平成10年7月発行−に書きましたが、小浜市内外海[うちとみ]湾には10年ほど前にはアサリが沢山いたのがこのごろは壊滅状態=編者)。
次、サザエ。波の荒いところに生息するものは殻のツノ(突起)が長い。このほうがうまい。ツノのないのは「ゴロンボ」と呼ばれ、韓国産が多く味は落ちる。殻の厚いものは中身が小さい。手にとって振るとコロコロと音がするのはダメ。尻尾の白いものはオス、緑色はメス。
夏ものではアワビ。メガイアワビは大きいものは殻の長さ25センチある。身は薄く、新潟以南のものがうまい。エゾアワビは新潟、関東以北に生息。クロアワビは殻が薄く、溝の凹凸ははっきりしている。味は一番だが漁獲量は激減している。そのうち房州ものが最高。昨今、クロアワビとして出回っているのはエゾアワビを暖流の地域に移植して繁殖させたもの。
次、ふつうシジミと言っているものはヤマトシジミのこと。夏から秋が旬、天日にさらした水たっぷりに1時間くらいつけると勢い良く水を吐き、ついでに砂を出す。買う時、口がしっかり閉じ、殻に傷や泥がついていず、表面が濃黒褐色のものが鮮度がよい。口が開いているものが多いのは鮮度が悪い。旨味を出すのは味噌汁が一番。島根県宍道湖(しんじこ)産のシェア−が大きいが滋賀県琵琶湖のセタシジミもよい。北海道の粒の大きいのは北海シジミ(マシジミ)と言って大味。(近辺では三方湖でも獲れるがこれまた少なくなっている=編者)。
冬ものでは何と言ってもカキ(牡蠣)。一般に出回っているのはマガキ。英語ではrの付く月=10月〜2月が安全と言うが=編者)やはり12月〜1月が旬。養殖もののほうが安全で衛生上よい。利用度は欧米のほうが盛んで養殖技術も上(欧米では“海のミルク”と言い評価は高い=編者)。広島産は大きく甘味はあるが、三陸もののほうが身が締まり海の香りも良く美味。それよりも志摩半島の的矢[まとや]湾産は的矢ガキと呼ばれ日本一。山からきれいな真水が海に流れ込む海域でよく育つ。(若狭湾の養殖はもうひとつふっくらとせず、うまみも少ないのは真水度のせいか=編者)。 |
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