No,87 平成 15年6月14日(土)

■特集■ SARS(サーズ:重症急性呼吸器症候群)
を知りその対策を学ぼう

二州健康管理センター医幹(二州保健所長) 武藤 眞 先生

 6月5日、武藤先生は当院職員のためにSARS(重症急性呼吸器症候群=新型肺炎)に関する講演をして下さいました。中国、香港、台湾、シンガポール、カナダで猛威を振るったSARSも目下下火になったようですが、この感染症については医療従事者だけでなく日本国民もよく知り、その対応について心がけていなければなりません。ここに先生のご講演の要旨をお届けします。

 SARSがなぜ危険かというと、 @人−人感染であるため対策が難しい(動物からだとその動物を駆除する手がある)。 A飛沫感染なので感染経路が単純で広がり易い(空気感染でない点は安心である)。 B初期は軽い症状なので飛行機くらいは乗れ、世界中に移動可能である(エボラ熱だと人に感染させる前に自分が動けなくなる) C初発症状では一般の風邪に似ているので、早期発見が困難。 D医療関係者や健康な人にうつる(体の弱った人とは限らない)。 E感染力や病原性が高い。 Fよって死亡率が高い。 G原因治療法が今のところ無い。

 結局、人−人だから人からもう二人にうつしたらネズミ算式に増えるので、絶対誰にもうつさない、そういう環境を創らないといけない。そのためには早く患者さんを見つけ、隔離するに必要がある。そして厳重な防御体制の中で、その患者さんに対処し、しかも短時間でないと飛散が拡大するから時間との戦いとなる。

 さて、この原因ウイルスはSARSコロナウイルスと呼ばれ、糞尿では1〜2日安定、4℃〜−80℃では21日後になって減少、56℃以下では急速に減少する。消毒は有効。インフルエンザよりは感染力は弱いと見られ、原則1〜2m以内に接近して飛沫を吸うと感染するとみられる。経口や接触感染も否定できない。

 発症してから1週間以降に人に感染させるようで一人で多数に感染させて患者さん(スーパースプレッダ−)の存在が報告されている。

 おおもとはハクビシン(白鼻心=ジャコウネコ科の哺乳類、体長50cmほど。顔、四肢、尾が黒。鼻に白い線がある。 編者注)と言われているが、これを食用としている地方の一種の風土病であったのが、何かの事情で外に出たのかも知れない。20〜40歳あたりがかかり易く、10歳以下は罹患が非常に少ない。

 潜伏期2〜10日、平均2〜7日。初期の確実な症状は38度以上の発熱。筋肉痛、悪寒、痰のない咳、呼吸困難など。SARSの疑いあり、と診断されるのは以上の症状がある人で発症10日前にSARS発症地域に居住、旅行していたか、既発症者の気道分泌物に触れたか、吸ったか。などを問診する。

 治療については、確立された原因療法はなく、ワクチンも目下はない。発症後は隔離し、適度の解熱剤や保温などを受け、安静にし、10日〜14日経ち高温が治まれば、よしとする。死亡率は44歳以下は7%ほど、65歳以上は50%以上になる。

 自分で疑わしいと思った人はまず電話で保険所か医療機関に相談する。

 その上で指示された医療機関(嶺南では市立敦賀病院[2床]、公立小浜病院[2床])に電話連絡の上、マスクをして指示された方法で受診する。

 先述したように、人にうつさないようにすることがこの病気の最も大事な予防対策なので、怪しいと思ったら、ともかく医療機関へ電話、と覚えていて欲しい。
 かかった人の人権も大切だが、うつされた人の人権も大切だし、それが蔓延した時の恐ろしさを思うと、いろいろと制約をかけられることはこの際お互い我慢しなければならないことだと思う。

 日本人は国内ではまだ一人も罹患していないのは幸いなことだが、水際作戦でこの状況が続くことを願っている。

<当院ホールでの武藤先生の講演>

武藤 眞 先生
 昭和55年大学卒業後、福井赤十字病院において呼吸器科の臨床医、平成13年より丹南健康福祉センタ−、平成14年より同・若狭へ、この6月からは同・二州へ転勤された。

 参 考 
 SARSウイルスは表面から花弁状の突起が出て、太陽のコロナのように見えるのでこう呼ばれる。
 人に感染するコロナウイルスは軽度の風邪の症状を起こすが、SARSのような重症にならなかったので、これは同類新種と判定されている。
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