3年半も前に翻訳、出版された本ですが、アメリカの名コラムニスト、ボブ・グリーンの「シボレーサマー」(TBSブリタニカ発行)には現在の病めるアメリカが描かれていて、身に染みます。
一文、2千字前後のコラムが70編余り、著者は児童虐待、子供の犯罪、司法制度のゆがみ(悪徳弁護士の増加)、麻薬の蔓延、挙銃社会のこわさを繰り返し書き、一方では、古きアメリカの礼儀正しさ、正義感を見つけては書くのですが、アメリカの病気はいっこうに治りそうもないことを、嘆きます。
7歳のデレナはシカゴの裏通りを歩いていて、麻薬のいざこざで撃たれ玉を3発も浴びた。その時連れていた愛犬は死んだ。やっと傷が癒えて、その後飼った犬は数人の少年に目の前で盗まれる。バスの中では「まるで猿ね」と心ない女に言われる。
エリック・モースは5歳、シカゴの公営住宅14階から突き落とされ死んだ。理由は11歳と10歳の遊び友達からコンビニで盗んで来いと言われて断わったためだ。8歳の兄は弟のモースの手を持って必死にかばったが力尽き、弟は落ちて行った。
この男の子には産まれた時から血中に母親からのヘロインが含まれていた。著者がなにがしか救われるのはこの哀れな子が盗む事はいけないと知っていたことだった。
読者諸君、こんなゲームをしてご覧。60チャンネルのテレビを1から60まで数秒きざみで切換える。60までの間に一度も銃が出てこなかったらあなたの勝ち。あなたはこのゲームではきっといつも負けるだろう。
いつからアメリカはこうなったのだろうと著者は嘆きます。
折しも、アメリカはイランを攻めようとしています。片や、その反対デモが各国で繰り広げられ、その写真を見ると「Stop
the war」「Don't attack IRAQ」のプラカードがひしめき合っているのは当然ですが、「No
blood for oil(石油のために血を流すな」「Stop
mad cowboy disease(狂ったカウボーイ[=ブッシュ]の病気をとめさせよ)」辛辣です。アメリカの病気はトップ(頭)にまで上がっているということでしょうか。
人間の病気もなかなか大変ですが、国が病んだら治るのに何年かかるのでしょう。 |
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