2月9日に愛媛県の水産高校実習船を米原潜の一方的ミスで沈没させてから、関連報道がなされない日はありません。
今や世界的に知れ渡った日本の水産高校遠洋航海実習について書いてみます。地元に小浜水産高校があり、実習船に「雲龍丸」があることをご存じの方は多いと思いますが、さて、その役割については意外に知られていないので、この際、記してみようと思ったわけです。”へえ〜そんなんだったの”と初めて聞く話があれば幸いです。
レジャーボートの運転には4級小型船舶操縦士の免許が必要、これは5t未満の船の船長。20t未満の船の船長なら1級小型船舶の免許。さて500t未満の船の場合は3級海技士の免許が必要なのですが、それには1年半の乗船履歴を要します。高校在学中に3ヶ月2ヶ年の専攻科に進学して1年3ヶ月乗船し、計1年半、やっと受験資格を獲得。その履歴を付けるために500t未満の船に乗るのですが、乗るからには何をするのがいいか、という中でどの水高もマグロ捕りを始めたのです。
だから基本的には乗船実習なのですが、多くの人は漁労実習が目的のように思っているようです。さて、それではマグロ捕りの話をします。
マグロ捕りと言いましたが、正式にはマグロ延縄(はえなわ)漁業と言います。水面にブイを付けた幹縄(みきなわ)を延ばしてそれに枝縄(えだなわ)を垂(た)らして、枝縄の先の針に餌を付けてマグロを捕るわけです。
さて、この幹縄の長さどのくらいと思われますか。多くの人は1qかな、いや5qぐらいはあるか、とおっしゃるのですが、水高実習船の場合は約100qで、民間の専用船なら150qもあります。枝縄は30〜50mで総数2〜3000本ほど。太さは幹縄で10o、枝縄で5oくらい。船を走らせながらこれに餌を付けて投縄(とうなわ)するのに4時間、4〜5時間マグロが食いつくのを待って揚縄(あげなわ)を始める。餌にかかったマグロをはずしながら揚げ終わるのに12時間。1航海3ヶ月でこの漁業を30回前後行なう。捕れたマグロは全部県の収入。1航海で2000〜4000万円。
この実習の意味はそれだけではありません。全水高実習船38隻で捕れたマグロは大洋のどこでいつどのくらいのが捕れたのか、克明な記録を取り、水産庁に報告されていて民間船より信頼度は高い。このお陰で、国際的な非難があってもマグロは減っていない動かぬ証明になっています。米国には水高はないし、この制度もないからなぜフィッシングボートに高校生が乗っているのか分からなかったようです。後になって米国の報道はトレイニングボートと直しました。文化、教育の違いの表われでした。
水高やマグロの話をするときりがないので今日はこのくらいで。
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